プロヴァンス地方を知ろう/フランスのワイン産地

フランスの南東部、照りつける太陽に青い海と白い砂浜、中心都市である港町マルセイユ、プロヴァンス地方には、ニースやカンヌなどのリゾート地もあり、フランス人にとってバカンスをイメージさせる土地です。ワインに関していうと、プロヴァンス地方は世界を魅了するロゼワインの聖地であり、その生産量は地域全体の約9割を占めます。プロヴァンス地方のロゼワインは、欧米の夏には欠かせない風物詩となっており、バカンスの昼下がりやアペリティフを華やかに彩る定番として愛されています。

プロヴァンスってどんなところ?

プロヴァンス地方は、フランスの南東部に位置し、ローヌ地方とイタリアに挟まれる地中海に面したワイン生産地域です。ブドウ畑は、東西に地中海に沿って約200km続きます。気候は海洋性気候。日照条件がよく、北風のミストラルが寒暖差を生み、乾燥した夏に恵まれて健全で熟したブドウを収穫できるワイン産地です。ロゼワインが、プロヴァンス地方のワイン生産量のほとんどを占めますが、赤ワインではバンドール、白ワインではカシー産のものも有名です。食文化では、地中海でとれる豊富な魚介類がやはり有名で、マルセイユなどの港町で、特産品として楽しまれています。

プロヴァンス歴史

プロヴァンス地方は、フランスで最も古いワイン生産地ともいわれ、紀元前6世紀にギリシア人がブドウを持ち込んだことに始まると言われます。その後、他のフランスのワイン生産地域同様に、2世紀ごろにローマ帝国の支配の元で、ワイン文化が大きく発展することになります。この時代のワイン造りではブドウの皮をあまり浸漬しないスタイルが主流であったため、当時のワインは現在でいうロゼワインのような色合いであり、現在に続くプロヴァンス・ロゼの源流が既に築かれていたといえます。その後も、プロヴァンス地方は、ロゼワインの文化を育み続け、1930年代以降には、プロヴァンスのロゼワインを象徴するアペラシオンの「コート・ド・プロヴァンス」のワインがAOC認定を受けました。そしてこのアペラシオン認定と同時期に始まったフランスのバカンス休暇の文化の浸透とともに、プロヴァンスに押し寄せた観光客が、その際に地中海の太陽とともに楽しんだロゼワインを「バカンスの象徴」として世界に広め、今も続く一大ブームになっていきます。

プロヴァンスのワインの特徴

プロヴァンス地方のワインの特徴として、やはり説明させていただきたいのは、生産量の90%以上を占めるロゼワインに関してです。ロゼワインの製法は、フランスの法律で、黒ブドウ品種を使用し、そのまま絞るか数時間から1日ほど果皮を浸漬して、色素と香り味わいを抽出することを義務付けられていて、白ワインと赤ワインをブレンドしてロゼワインを造ることは禁止されています。プロヴァンス地方では、収穫されたブドウをそのままゆっくりと絞って、果汁と色素を一緒に抽出する「ダイレクト・プレス」という方法が主流で、この製法により、淡い色合いの、爽やかでドライ、スッキリとした味わいのロゼワインが生産されています。このスッキリとした味わいのロゼワインだからこそ、地中海の太陽のもと、良く冷やして味わいたくなるのです。

主なワイン品種

プロヴァン地方で栽培される品種は、その代名詞であるロゼワインを造るための黒ブドウ品種が多く、なかでも最も栽培されている品種は、グルナッシュです。また、プロヴァンス地方のロゼワインは複数の品種をブレンドして生産されることが一般的で、サンソーやシラー、ムールヴェードルなどの黒ブドウも同様に多く栽培されています。生産量の90%以上がロゼワインのプロヴァンス地方ですが、地中海気候の恩恵を受けた高品質な赤ワインと白ワインも生産されていて、白ブドウとしては、ロールやユニ・ブランが主に栽培されています。プロヴァンス地方で栽培される、これらの代表的なブドウ品種を以下に詳しく説明いたします。

グルナッシュ

プロヴァンス地方やその隣のローヌ地方で広く栽培される黒ブドウ品種。地中海沿岸の日射量や乾燥に適していて、果皮の色素もそこまで強くなく、柔らかでジューシーな果実味を持ったワインを造り上げます。スペイン原産のブドウ品種で、スペインではガルナッチャと呼ばれています。

サンソー

南仏を中心に栽培されているブドウ品種です。暑い気候に適していながら、酸味と軽やかな味わいをワインに表現するブドウ品種で、プロヴァンスロゼのブレンドにおいては、フレッシュ感とみずみずしさをワインにもたらします。

ムールヴェードル

晩熟の黒ブドウ品種。地中海沿岸の強い日差しと乾燥した気候に相性がよく、赤ワインに使用すると、力強く長期熟成のポテンシャルを持ったワインに仕上がります。プロヴァンス地方のロゼワインのブレンドに使用されることも多く、ワインにボディと骨格を与えます。

ロール

プロヴァンス地方では、ロールと呼ばれているブドウ品種ですが、国際的にはヴェルメンティーノと呼称されるのが一般的だったブドウ品種です。しかしながら、2022年からイタリア産のみをヴェルメンティーノと呼ぶことに決まり、フランス産のものは全てこの「ロール」という名前で呼ばれるようになりました。まだ日本では「ロール」の名前は一般的ではなく、フランス産であったとしても「ヴェルメンティーノ」と認識されている方も多いかもしれません。ロールは、グレープフルーツやライムなどの爽やかな果実味と、タイムなどの地中海のハーブ感を持つブドウ品種。沿岸部で栽培されることも多いためか、かすかな塩味や苦みなどの海を連想させるミネラルも表現しています。

プロヴァンスの主な産地

コート・ド・プロヴァンス

プロヴァンス産のワインの生産量の7割以上を占めるアペラシオン。生産地域も大きく、西はアヴィニョン南部、東はカンヌ近くの都市フレジュまでの約200km、3つの県にまたがります。コート・ド・プロヴァンスで生産されるワインの90%はロゼワイン。グルナッシュや、サンソー、ムールヴェードルをブレンドし、淡い色調のスッキリしとした味わいのものが生産されています。

カシー

ロゼワインの生産が大多数を占めるプロヴァンス地方の中で、白ワインをメインにする珍しい地域です。ブドウ畑は、マルセイユの東にある地中海に面したカシ―村周辺に位置し、高さ400mの石灰質の断崖上に広がります。主要品種は、クレレットとマルサンヌで、この2品種をメインにブレンドされます。フレッシュでスッキリとした味わいの白ワインで、地中海の風を感じる潮の要素もあり、地中海でとれる魚介料理と相性抜群です。

バンドール

プロヴァンス産の赤ワインと言えば、バンドールと言われるほどの地域を代表する生産地です。しっかりとした味わいの長期熟成型のワインをつくることができる黒ブドウ「ムールヴェードル」をメインに使用し、樽熟成も18ヶ月以上行うことを義務付けられています。長期熟成型ワインとしてボルドーワインと比較され評価されるワインでもあります。

プロヴァンスによく合う食事は?

地中海沿岸の豊かな気候が育む食材を、シンプルに活かした料理が魅力のプロヴァンス地方。なかでも最も有名なのが、港町マルセイユの伝統料理「ブイヤベース」です。 地魚の濃厚な旨味に、トマトやにんにく、サフランやフェンネルの香りを効かせたスープは、プロヴァンスのロゼやカシーの白ワインが相性抜群です。

さらに、この地の食文化を象徴するのが「エルブ・ド・プロヴァンス(Herbes de Provence)」と呼ばれるハーブブレンドです。タイム、ローズマリー、オレガノといった地中海を代表するハーブがブレンドされており、魚料理から肉料理まで幅広く使用され、地中海のハーブが薫る料理とプロヴァンス産ワインの組み合わせは、最高のマリアージュの一つです。

プロヴァンス地方には、他にもニンニクを使用したマヨネーズのような「アイオリ・ソース」や、地中海の野菜をたっぷり使ったラタトゥイユ、特産であるオリーブを使用した「タプナード」など多様な料理があり、多様な郷土料理が息づいています。どれもプロヴァンス産のワインと一緒に、地中海の太陽と風を感じながら心ゆくまで楽しみたい味わいばかりです。 

まとめ

太陽の恵みをいっぱいに浴びて育つプロヴァンスのワイン。もちろん、日本の気候、特に暑い夏にも美味しく楽しめますし、プロヴァンス地方の伝統料理や食材も既に我々にとって身近で親しみやすいものばかりです。ブイヤベースをはじめとするプロヴァンスの郷土料理だけでなく、我々日本人の日常にあるような魚介料理とともに、プロヴァンスワインを是非お楽しみください。

記事:WineJourney編集部