アルザス地方は、フランスの北東部、ドイツとの国境沿い、ライン川(仏語読:ラン川)とヴォージュ山脈に挟まれた南北170kmに伸びるワイン生産地域です。アルザス地方は、白ワインの銘醸地ともいえるほど圧倒的に白ワインの生産量が多く、シャープな味わいの品種からアロマティックなブドウ品種まで様々なタイプのものが生産されています。また近年では、白ワインだけでなく、スパークリングワインや赤ワインもその品質の高さが再評価されている地域でもあります。
また、アルザス地方の歴史や文化には隣国であるドイツの存在は切っても切り離せません。歴史的にも、アルザス地方はドイツ領となった時期もあり、アルザスワインとドイツワインには共通する項目が多くあります。アルザス地方は観光地としても有名で、おとぎ話に出てくるようなカラフルな組木の家の街並みや、12月のクリスマスマーケット時期には世界中の観光客を集めます。
フランス北部・アルザスってどんなところ?

アルザス地方は、南北に長いワイン生産地域です。2つの大きな都市を中心に地域が分かれていて、ライン川下流(北側)がバ・ラン県に位置し、その中心にはストラスブールというアルザス地方最大の都市があります。ストラスブールはドイツとの国境に面した都市。ストラスブールの中心地には、ノートル・ダム大聖堂があり、ゴシック建築の傑作とも評され、一見の価値があります。ライン川上流(南側)は、オー・ラン県に属し、中心にはコルマールという街があります。人口はストラスブールよりも少ないですが、コルマールもアルザス地方の中心都市のひとつです。コルマールの街の中心を流れる運河とカラフルな組木の街並みの美しさから、プティット・ヴニーズ(小さなヴェネチア)とも呼ばれています。ワイン生産地としては、グラン・クリュ(特級畑)が集中するコルマール周辺の方が中心地とされますが、温暖化が進んだ結果、ストラスブールを中心とする北部地域も近年では高く評価されています。
アルザスの歴史
フランス北東部、ドイツとの国境沿いの地域のアルザスですが、豊かな土地をもつため、昔から様々な民族や国に代わる代わる支配されてきた土地です。紀元前1世紀には、ほかのフランスの地域同様ローマ帝国の一部となり、その際にストラスブールなど、今のアルザス地方の中心都市の原型ができました。その後、フランク王国を経て、神聖ローマ帝国となり、この神聖ローマ帝国時代に、現在も続くドイツ的な要素が反映されたアルザス地方の文化が形作られたそうです。
17世紀に起きた30年戦争のあと、アルザス地方はフランス王国領となります。しかし、1870年にナポレオン三世とプロイセン王国が対立し発生した普仏戦争にフランスが敗北したことにより、アルザス地方は再びドイツ領になりました。その後1914年発生した第一次世界大戦では、フランスが勝利し、アルザス地方は再びフランス領に。しかしながら、1940年には再びドイツ領となりますが、第二次世界大戦を経て、また再びフランスへと変換されました。このような歴史背景があるため、アルザス地方には、ドイツの文化も色濃く残っており、ワインに関しても、味わいや使用されるブドウ品種に類似点を多く見つけることができます。
アルザスのワインの特徴

アルザス地方は、生産量の約9割を白ワインが占める白ワインの銘醸地です。そのブドウ品種も多様で、高貴品種と呼ばれるリースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカ、そのほかにもシルヴァネールやピノ・ブランなどのブドウ品種もあります。アルザス地方では、赤ワインの生産量は多くはありませんが、ブルゴーニュ地方と同じピノ・ノワールを使用して生産されています。また、アルザス地方の土壌は、片岩や花崗岩、石灰質、砂や粘土など非常に多彩に渡ります。この多様な土壌と多様なブドウ品種が合わさることにより、アルザスワインは非常にバラエティ豊かになります。アルザス地方は、品種や土壌の種類が多く、一口にアルザスワインの特徴を説明するのは難しくもありますが、全体的に軽やかで綺麗な酸のあるエレガントなワインが生産される地域という認識でいいでしょう。
主なワイン品種
リースリング
アルザス地方を象徴する白ワイン用ブドウ品種で、アルザス地方で最も栽培されている品種です。辛口ワインから甘口ワインまで多様な白ワインが造られ、酸味のある特徴を活かして、スパークリングワインにも少量ブレンドされたりもします。アルザス地方産の、特にグランクリュのものは世界最高峰のリースリングとも評価されます。
レモンやグレープフルーツなどの柑橘系の果実味を持ち、ぺトロール香、または石油香とも呼ばれる香りを持つこともリースリングの特徴の一つです。また、リースリングの持つ華やかな花の香りはよく菩提樹の花の香りに例えられます。
ゲヴュルツトラミネール

リースリングと並び、アルザス地方を代表するブドウ品種のゲヴュルツトラミネール。特徴的なライチのような果実味を持ち、華やかな香りはバラに例えられます。イタリアやドイツでも栽培されているブドウ品種ですが。アルザス地方産のゲヴュルツトラミネールに辛口は少なく、甘口から若干の残糖分を持つようなものが生産されています。近年では、ゲヴュルツトラミネールの果皮を活かしてオレンジワインが生産されることも増えてきました。
ピノ・グリ

白ワイン用ブドウ品種ですが、果皮は黒ブドウのように色がついたブドウ品種です。グリというのも、直訳すると「灰色」を指し、ピノ・グリの果皮は一般的な黒ブドウ品種と比較すると若干淡い色合いです。果皮が黒くとも果汁は透明ではありますので、白ワインを生産することができるのですが、色素のある果皮由来のボディ感や要素が味わいには表現されます。ピノ・グリから造られた白ワインには、スモーキーな香りが特徴的であると評されます。
ミュスカ

ミュスカは、Muscatと書き、日本人的に発音すると「マスカット」です。厳密には我々がイメージするマスカットとは違うブドウ品種ですが、その名の通り、マスカットのような果実香や、白い花を連想させるような華やかな香りを持ったブドウ品種です。甘口ワインを生産することもあるブドウ品種ですが、アルザス地方では辛口ワインをつくることが多く、甘やかな香りを持ちながらもドライな飲み口を持ったワインが生産されています。
ピノ・ノワール

白ワインの銘醸地とされ、その生産量の90%以上が白ワインのアルザス地方ですが、他のワイン産地同様、赤ワインも生産されています。アルザス地方産赤ワインに使用されるブドウ品種は、ピノ・ノワール。アルザス地方産のピノ・ノワールは、軽やかでチャーミングな果実味を持つとされます。アルザス地方産のピノ・ノワールは生産量も少なく、注目を集めることが少なかったのですが、同じピノ・ノワールを使用するブルゴーニュ産のものが高騰していることや、温暖化によりアルザス地方でもより高品質のものが生産されるようになり、人気も急上昇しています。
アルザスワインによく合う食事は?

フランス国内でも、ドイツと国境を面するアルザス地方は、食文化にもその影響を色濃く受けます。アルザス地方の郷土料理と言えば、代表的なものは、塩漬けした発酵キャベツを使用する「シュークルート」、フロマージュ・ブランとベーコンを使用した薄焼きピザの「タルト・フランベ」、じゃがいもと肉、白ワインを使用したアルザス風肉じゃがともいえる「ベッコフ」などがあります。また、アルザス地方は「ホワイト・アスパラ」や「フォアグラ」など、フランスを代表する食材の産地でもあります。
白ワインの生産がほとんどであるアルザス地方ですが、様々な品種がマリアージュの楽しみに幅を持たせています。酸味と塩気を持つ発酵キャベツと肉類の油分がある「シュークルート」は、リースリングと相性がいいと言われます。春の訪れを告げる野菜「ホワイトアスパラ」にはちょっとしたほろ苦さがあり、ミュスカを使用した白ワインを合わせるのが定番です。濃厚な味わいを持つフォアグラには、リッチな果実味とスパイシーさを持つゲビュルツトラミネールを合わせます。以上が、アルザス地方の典型的なマリアージュと言えますが、繊細さと優しい甘みを持ち合わせるアルザスワインには、同様に繊細さと甘みを持つ和食との相性もいいとされます。和の食材や和食とのマリアージュは、現地フランスでも既に馴染みのある組み合わせです。是非、ご家庭でもお試しください。
まとめ
今回は、アルザス地方のご紹介でした!アルザスワインは、我々日本人とも関わりが深く、その歴史は160年以上あるとされます。2025年に開催された大阪・関西万博でも、フランスパビリオンではアルザスワインが提供されました。アルザスワインの輸出において、日本はアジアで最も大きな輸入国(世界6位)です。我々日本人の味覚や食文化にも適しているワインとも言え、日常のいろいろなシチュエーションでお楽しみいただけたらと思います。
記事:WineJourney編集部

