フランスの中でもボルドーワインというと力強くどっしりとしたフルボディのワインを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。シャトー・マルゴーやシャトー・ムートンなど有名なメゾンも多く世界中のワイン好きを唸らすようなプレミアムなワインが生まれるのもこの土地です。赤ワインが有名なボルドーですが、実際には白ワインやデザートワインなど様々な種類のワインが作られているのもボルドーの特徴です。今回は、ボルドー地域の特徴を深堀していきます。
ボルドーってどんなところ?
ボルドーはフランスの南西部、大西洋に近いワイン産地です。ボルドー地方には、ガロンヌ川とドルドーニュ川、そしてその二つの川が合流したジロンド川の3つの川を中心にワイン産地が広がっています。
ボルドー地方では、赤ワインや白ワイン、ロゼ、スパークリング、甘口ワインなど様々なタイプのワインが生産されておりますが、特に有名なのはやはり赤ワインです。ブルゴーニュの単一品種で作られるワインとは違い、複数のブドウ品種をブレンド(仏語:アッサンブラージュ)して造り上げることが一般的です。
ボルドーワインの歴史
ボルドーワインの歴史も、他のフランスのワイン生産地域同様に、一世紀ごろに現在のフランスの土地がローマ帝国の支配下となった際、ローマ人がブドウの木とワイン文化を持ち込んだことに始まります。その後、ボルドー地方のワインはサン・テミリオンなどの街で、修道士たちが中心となって発展させていきます。
ボルドー産ワインが、ボルドーワインとして名を馳せるようになったのは、12世紀になってから。ヘンリー2世とアリエノール・ダキテーヌの結婚により、ボルドー地方がイギリス領となった結果、イギリスへの輸出が活発となり、その品質が高く評価されることとなります。この頃からボルドー地方では、ワインビジネスやワインの輸送方法が確立され、イギリス以外の国々にも輸出されることになりました。その後も国際的な評価を高めていったボルドーワインは、1855年のパリ万国博覧会にメドック地方の格付けが行われ、著名シャトーが1級から5級まで格付けされた結果、その評価をゆるぎないものとしました。現在もボルドー地方のワインは、世界のワイン業界を引っ張る存在として、伝統と文化を守りながらも、最新技術が導入された先進的なワインとして知られています。
ボルドーのワインの特徴

ボルドー地方の赤ワインは、力強く、渋みがしっかりとあるフルボディタイプが一般的です。若いうちは、渋みや収斂性が目立つワインもありますが、長い時間をかけて熟成させると、渋みが落ち着き、全体の香りと味わいの調和が取れ、旨味を伴います。熟成を経たボルドーワインの味わいは唯一無二と言えるでしょう。
ボルドーワインはリーズナブルな価格帯のものでも、10年以上熟成させることができますし、トップワイナリーのワインになると、30年以上、さらにトップワイナリーの偉大なヴィンテージのワインなら100年以上熟成させることができるとも言います。また、一方で、若い頃からも楽しめるようなフルーティな味わいと熟成できるポテンシャルを併せ持ったボルドーワインが近年になり生産されるようになりました。
メドックの格付けってなに?
ボルドー地方のワインは、各ワイナリーに「格付け」がされていることも大きな特徴と言えます。
ボルドー地方の最も有名な格付けは、1855年の第1回パリ万博で、ナポレオン3世の命により制定されたメドック地区の格付けです。全部で61のワイナリーが、1級から5級まで格付けされました。その格付けは150年以上たった今でも有効で、ボルドーワインの品質や価格を判断する基準となっています。
メドック地方の1~5級の格付けには、それぞれ、1級 5シャトー、2級 14シャトー、3級 14シャトー、4級 10シャトー、5級 18シャトーが格付けされており、特に1級の5つのシャトーは、「5大シャトー」とも呼ばれ、世界中のワインラヴァーから羨望のまなざしを受けるワインとなっており、その品質もやはり素晴らしく、グレートヴィンテージのものは50年以上も熟成し楽しめるとも評されます。
| シャトー・ラフィット・ロートシルト | ポイヤック |
| シャトー・ムートン・ロートシルト | ポイヤック |
| シャトー・ラトゥール | ポイヤック |
| シャトー・マルゴー | マルゴー |
| シャトー・オー・ブリオン | ペサック・レオニャン |
ボルドー地方にあるワインの格付けは、メドック以外にも他にもサンテミリオン地区、グラーヴ地区、ソーテルヌとバルザック地区の格付けや、クリュ・ブルジョワなどがあります。
主なワイン品種
赤ワインが有名なボルドー地方ですが、白ワインやロゼ、甘口ワイン、そしてスパークリングワイン、多様なワインが生産される地域でもあります。ボルドーワインに使用される主なブドウ品種を以下にご説明いたします。
カベルネ・ソーヴィニヨン

果皮にしっかりとした色合い(色素)のある黒ブドウ品種で、ボルドー地方では特にメドックでの栽培が盛んなブドウ品種です。出来上がる赤ワインはフルボディで重厚感があり、長い熟成にも耐えうるポテンシャルを持ち合わせます。
メルロー

カベルネ・ソーヴィニヨンとともにボルドー地方を代表する黒ブドウ品種です。しっかりとした味わいのワインを生産することができるブドウ品種ですが、カベルネ・ソーヴィニヨンと比較すると、よりフルーティで飲みやすい赤ワインに仕上がります。
ソーヴィニヨン・ブラン

爽やかな味わいを持つ白ワイン用品種。さっぱりとした柑橘系の果実味にハーブのニュアンスを持った白ワインが生産されることが多く、ボルドーでは、アントル・ドゥー・メール産のものが有名です。
セミヨン

辛口の白ワイン用のブドウ品種。ゆったりとしたボディ感や柔らかな果実味があるので、酸味のあるソーヴィニヨン・ブランとブレンドしてワインが造られることが多いです。甘口ワインを生産することも多く、ボルドー地方では、ソーテルヌなどの貴腐菌を利用した甘口ワインが有名です。
ボルドーの主な産地
ガロンヌ川とドルドーニュ川、そしてその二つの川が合流したジロンド川の3つの川を中心にワイン産地が広がっています。大きく分けて4つの区域があり、詳しく説明をしていきましょう。
メドック地区
ジロンド川左岸に広がる地域、ボルドーワインラヴァーは、この地区のことを単に「左岸」と呼ぶこともあります。ボルドーワインと言えば、「メドック」という認識もあるほどのボルドー地方を代表する地区です。メドック地区には、砂利や粘土に優れた土壌があり、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培が盛んです。土壌は水はけが良く、砂利質の土壌が熱を溜め込む性質があるため、果実は凝縮しワインに力強い味わいを与えます。
メドック地区内には、サン・テステフ村、ポイヤック村、サン・ジュリアン村、マルゴー村があり、それぞれの村ごとにワインの味わいに特徴があります。また、メドック地区にあるシャトー(ワイナリー)は、お城のような外観を持っているものが多く、ドライブするだけでも十分に景観を楽しんでいただけるでしょう。メドック地区では、毎年秋に各シャトーをめぐる「メドックマラソン」が開催されており、優勝者には体重分のワインが贈られます。
ポムロール地区
ポムロールは、メドックと比較すると、とても小さなワイン生産地ですが、世界的に評価されているワイナリーも多く、小規模な生産量と相まって非常に高額で取引されることもあります。土壌は、粘土質に酸化鉄を多く含んでいてボルドー地方でも非常に特徴的です。使用する品種はメルローがメイン。ポムロールのワインは、力強く、リッチで芳醇、熟成とともに様々な要素を表現するワインです。
サンテミリオン地区
ボルドー地方は、ジロンヌ川やドルドーニュ川を境に「右岸」「左岸」と区別されるのですが、右岸地域で最も有名なワイン生産地区がこちらのサンテミリオン地区です。サンテミリオンは、修道士が築いた石造りの街。世界遺産にも登録されている美しい街並みがあります。土壌は石灰質に優れ、その石灰質の石を切り出して、建築に使用した歴史があるのですが、切り出した後の洞窟は、そのまま地下カーブとして今もワイン醸造所として使用されています。サンテミリオンのワイン造りでは、メルローやカベルネ・フランという品種が一般的には使用され、土壌の石灰質の影響を受けた力強くもエレガントなワインが生産されています。また、サンテミリオン地区も、メドック同様に独自の格付けを持ち、第一特別級A(プルミエ・グランクリュ・クラッセ A)に格付けされるオーゾンヌやシュヴァル・ブランは、最も有名なボルドーワインの一つです。
グラーヴ、ぺサック・レオニャン地区
ボルドーの街中よりすぐ南に広がるワイン生産地域のグラーヴ地区とぺサック・レオニャン地区。元々はぺサック・レオニャン地区もグラーヴ地区の中にあり、1987年より区別されたという歴史があるので、この2地域は一緒に語られることがほとんどです。グラーヴは、直訳すると「砂利」を意味し、ガロンヌ川が運んできた砂利が土壌に多いことからその名がつきました。グラーヴ地区にも独自の格付けがありますが、ボルドー地方にしては珍しく、赤ワインだけでなく白ワインも格付けされています。また、1855年に定められた「メドック」の格付けの1級、5大シャトーの一つである「シャトー・オー・ブリヨン」は、正確にはこちらの地域に属しています。
ソーテルヌ、バルザック地区
ガロンヌ川の左岸に位置する地域のソーテルヌとバルザック地区。世界で最も有名な甘口ワインの生産地域です。こちらの地域は、秋に霧が発生しやすく、その霧のお陰で貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)がブドウの果皮に付着します。
貴腐菌がブドウの水分を奪うことにより、果汁と糖分が凝縮され、そのブドウを使用することで甘口ワインが造られています。
ソーテルヌとバルザック地区の貴腐ワインは、甘口ワインの中でも特に甘みや凝縮感、複雑性に優れ、世界最高の甘口ワインと知られています。甘いとは言っても、貴腐ワインには酸味も備わっているため、ベタベタとせず飲み心地のいい味わいです。我々日本人にとっては馴染みのあまりない甘口ワインですが、フランスではフォアグラと一緒にクリスマスに楽しむのが定番です。他にも、塩気と旨味の強いブルーチーズに合わせたり、デザートやドライフルーツにも相性抜群です。食後酒のイメージのある甘口ワインですが、ボルドー地方では、同じくボルドー地方特産である生牡蠣に合わせたりもするそうで、磯っぽさと旨味にしっかりとマリアージュするそうです。
アントル・ドゥ・メール地区
ガロンヌ川とドルドーニュ川にはさまれた地域。軽やかな赤ワインや、爽やかな味わいを持つソーヴィニヨンブランを使用した白ワインの生産で有名な地域です。フルボディの赤ワインのイメージが強いボルドー地方ですが、大西洋近くの港待ちという土地柄、現地では魚介類と合わせて白ワインが楽しまれることもしばしばです。アントル・ドゥ・メールのワインはリーズナブルな価格帯のものが多いため、日常的に楽しめるワインといえます。現地では、特産の生牡蠣やシーフードプラッターなどとともに楽しまれています。
ボルドーによく合う食事は?

ボルドー産ワインと言えば、フルボディのしっかりとした赤ワイン。この赤ワインに合わせるのは、やはりお肉料理です。フランス中のビストロで食べることのできる定番料理ステック・フリット(ステーキとフライドポテトのプレート)にはぴったりですし、ボルドーワインを使用したソース・ボルドレーズもあれば、最高のマリアージュです。また、牛肉だけでなく、同じくボルドー名産の羊肉も、しっかりとした渋みのあるボルドーワインと相性抜群です。
もちろんボルドーワインの楽しみは赤ワインやお肉料理だけではありません。ジロンド川に面し、大西洋にも近いボルドーは港町として発展してきました。その川や海でとれる食材もボルドー地方の名産物の一つです。特に有名なものは、海沿いの街アルカションで収穫される牡蠣や魚介類で、現地ではさっぱりとしたボルドー産白ワインやロゼワインと一緒に楽しまれています。また、日本でもブームになった「カヌレ」はボルドー地方の伝統的な焼き菓子で、こちらは甘口のソーテルヌととても相性がいいです。
まとめ
以上がボルドーワインについてのご紹介でした!力強くフルボディ、かつ緻密な味わいを持ったエレガントなワインとしては、世界最高峰の品質を持つボルドーワイン。その素晴らしさの全てを知るためには、何十年も熟成をさせる必要があり、奥深く深淵なワインともいえ、世界中のワインラヴァーからはるか昔より愛されています。また、そういったワインだけでなく、カジュアルな値段と若いヴィンテージでも楽しめるような味わいのバリューボルドーの存在や、さっぱりとした軽い白ワインやロゼ、さらには甘口ワインに至るまで、様々な多様性を持つところもボルドーワインの魅力といえます。
記事:WineJourney編集部